ウィリアム・メレル・ヴォーリズと静岡

米国出身の建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880〜1964年)はキリスト教関係で信頼が厚く、ミッションスクール、教会、宣教師館などを全国各地に建てています。
明治39年に設立された軽井沢のユニオンチャーチは宣教師の避暑地であり、交流の場でもありました。
現在の建物は大正7年竣工のヴォーリズ建築。静岡英和女学院の校長を務めた歴代カナダ人宣教師もおそらくここでヴォーリズと交流があったことと推測されています。 

大正13年(1924年)静岡英和女学院はヴォーリズに校舎の設計を依頼。2年後に完成した校舎は『昭和元年校舎』と呼ばれていました。
1_昭和元年校舎全景 昭和元年校舎全景

2_昭和元年校舎正面 昭和元年校舎正面

その後、体育館・寄宿舎・宣教師館等の設計が依頼されましたが、静岡大火や戦争により校舎は門柱を残して全て失われてしまいました。
資金調達の困難化などにより宣教師館の計画は頓挫。終戦後、新たに宣教師館の建設が計画され、西草深町の現在の地に建てられたのです。

ヴォーリズの建築リストには静岡県内のものが20棟以上分存在していますが、現存の確認が取れているものは、旧マッケンジー邸(静岡市)旧英和女学院宣教師館(静岡市)日本福音ルーテル栄光教会焼津礼拝堂(焼津市)YMCA東山荘フィッシャー館(御殿場市)と数少ないのが現状です。
日本福音ルーテル栄光教会焼津礼拝堂(焼津市)は、同市を母港とするマグロ漁船「第五福竜丸」が米国によるビキニ環礁水爆実験で被爆した1954年3月の直後の完成で、屋根や扉など一部は改修されているが基本的には建築当時のまま。現在も聖書の勉強会や毎週日曜日の礼拝で使われています。
しかし、取り壊しになったものや特定できない物件もあり、来年度まで継続される調査で新たなヴォーリズ建築の発見が期待されています。